ヤマブシタケの効能とは?科学的根拠・副作用まで解説

2026.06.09
成分

「ヤマブシタケのサプリが記憶や脳に良いと聞くけれど、実際のところどうなの?」

そう思うのも無理はありません。健康食品の世界には「〇〇に効く!」という謳い文句があふれていて、どれを信じていいのか迷ってしまいます。

ただ、ヤマブシタケについては、ひとつお伝えできることがあります。「なぜ良いとされるのか」という仕組みの研究が進んでおり、人を対象とした臨床試験での報告も積み重なってきています。

この記事では、ヤマブシタケの効能・安全性・上手な使い方を、研究データをもとにまとめます。

ヤマブシタケ(山伏茸)とはどんなキノコ?

球状に集まった白い針状のヤマブシタケ

ヤマブシタケ(山伏茸)は、シイタケやシメジのようなカサを持たず、白くてフサフサとした針のような突起が球状に集まった、一目見て「これがキノコ?」と思うような個性的な見た目のキノコです。その姿が、修験道(しゅげんどう)の山伏が胸元につけている丸い飾り(梵天)に似ていることから、この名前がついたと言われています。

中国では古くから「四大山海珍味」のひとつに数えられ、宮廷料理にも使われてきた高級食材です。日本にも自生しており、クセがなく出汁をよく吸うため、お吸い物やスープに入れると美味しいのですが、一般のスーパーにはほとんど流通していないのが実情です。

そんなヤマブシタケが近年サプリメントとして大きな注目を集めているのは、脳の働きとの関連が研究されている成分を含むことがわかってきたためです。単なるビタミン補給や抗酸化作用といった話ではなく、脳の仕組みに関わるメカニズムの研究が進んできたことで、研究者からも一般の方からも関心を集めるようになりました。

ヤマブシタケの効能|記憶・気分・睡眠と、研究でわかっていること

ヤマブシタケについては、おもに「記憶・認知機能」「気分」「睡眠」の3つの方向で研究が行われています。

いずれも単なる口コミや噂ではなく、試験をもとに報告が出てきているテーマです。ただし、どれも「効く」と確定したわけではなく、研究が続いている段階です。

脳の中で起きていること——ヘリセノンとエリナシン

ヤマブシタケの成分とNGF・神経新生の関係を示す図

脳の神経細胞は、かつては「一度壊れたら再生しない」と信じられていました。ところが現代の科学では、新しい神経細胞が作られる「神経新生」が実際に起こることがわかっています。この神経新生を促すために欠かせないのが、NGF(神経成長因子)と呼ばれるタンパク質です。植物が育つのに肥料がいるように、神経細胞が育つにはNGFが欠かせません。加齢とともに脳内のNGF産生は低下していくため、これをいかに保つかが、脳の若さを維持する鍵のひとつとされています。

ヤマブシタケには、このNGFの産生を後押しする成分が2種類含まれています。子実体(キノコの本体)に多い「ヘリセノン」と、菌糸体(根の部分)に多い「エリナシン」です。どちらも、細胞や動物を使った実験では、NGFの産生に関わる可能性が報告されています。特にエリナシンは脳への到達性が高いことで知られています。食品成分がこれほど直接的に脳神経系に働きかけられる例は珍しく、研究者が注目する理由はここにあります。

効能の科学的根拠は?──人を対象とした研究で報告されていること

NGFを産生するという発見をもとに、人を対象とした試験も着実に進んでいます。

  • 記憶・認知機能について:軽度認知障害と診断された50〜80歳の男女30名を対象に行われた二重盲検プラセボ対照試験(Mori et al., 2009)では、ヤマブシタケを16週間摂取したグループが、認知機能テスト(改訂長谷川式スケール)で有意な向上を示しました。摂取をやめると4週間後にスコアが下がり始めたことも確認されており、摂取している間に変化が見られた可能性が示唆される結果です。
  • 気分について:30名の女性を対象とした試験(Nagano et al., 2010)では、4週間の摂取後に、気分に関する指標が対照群と比べて良好だったと報告されています。ヘリセノン・エリナシンによるNGF産生促進とは異なる経路で気分に関わっている可能性も示唆されており、現在も研究が続いています。
  • 睡眠について:ヤマブシタケエキスを摂取したマウスで、概日リズム(体内時計)の変化や寝起きの改善が報告されています。人での睡眠との関連は、これから研究が進められる段階です。

こうした研究が少しずつ積み重なってきており、ヤマブシタケは食品成分として注目され、研究が続いています。

なお、一部に「血流改善で抜け毛や白髪にも効く」という情報が見られますが、これを支持する科学的な根拠は確認されていません。記憶や脳の健康を意識して取り入れるのが、現実的な使い方です。

ヤマブシタケに副作用はある? 安全性と注意点

「脳に働きかける成分」と聞くと、「強い副作用があるのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、ヤマブシタケの安全性は非常に高く、複数の臨床試験を通じても、重い副作用の報告はほとんどありません。

サプリメントとして錠剤やカプセルに加工されていると薬のように見えますが、ヤマブシタケの正体は「キノコ(植物性食品)」です。シイタケやマイタケを食べるのと本質的に同じカテゴリーであり、記載された1日の目安量を守って使う分には、体に悪影響を及ぼす可能性は極めて低いといえます。

注意が必要なケース

  • キノコアレルギーをお持ちの方:摂取前に成分をよく確認し、ごく少量から試すか、事前に医師へご相談ください。
  • 抗がん剤など強力な治療を受けている方:一部の薬は、食品の成分と相互作用を起こす可能性がゼロではありません。自己判断せず、主治医や薬剤師に「ヤマブシタケのサプリを飲んでもよいか」を確認してください。
  • 過剰摂取:天然由来の成分であっても、極端に多い量を摂ると消化不良や胃腸の不調につながる場合があります。目安量を守ることが基本です。

一般的な服薬との併用は、多くの場合は問題になりません。ただし、上記に当てはまる方は、念のため医師にご相談ください。

ヤマブシタケのサプリの選び方|どこで売ってる?値段は?

ヤマブシタケのサプリメント(カプセルと粉末)

生のヤマブシタケは一般流通が限られているため、続けて成分を摂るにはサプリメントが現実的な選択肢です。市販品には「錠剤・カプセルタイプ」と「粉末タイプ」の2種類があります。

  • 錠剤・カプセル:風味が気になる方や、外出先でも手軽に飲みたい方向き。水でさっと飲めます。
  • 粉末:キノコ特有の旨味と香りがあるため、毎日の味噌汁やスープにさっと混ぜて、食事の一部として自然に取り入れられます。

子実体と菌糸体、どちらを選ぶ?

製品を選ぶ際は「子実体(本体)エキス」「菌糸体エキス」「両方配合」のどれかを確認しておきましょう。ヘリセノンは子実体に、エリナシンは菌糸体に多く含まれます。両成分を摂りたい方は、両方配合の製品を選ぶのが効率的です。

どこで売ってる? 値段の目安は?

ヤマブシタケのサプリは、ドラッグストアではあまり見かけません。買うなら、Amazonや楽天、メーカーの公式サイトなどの通販が中心になります。値段は内容量や成分の濃さによって幅がありますが、1か月分でだいたい1,000円台〜4,000円くらいが、ひとつの目安です。

効果を実感するには、続けることが前提

ヤマブシタケは、頭痛薬のように「飲んですぐ効く」タイプではありません。神経細胞レベルでの変化には時間がかかるため、臨床試験でも4週間〜16週間の継続摂取を前提として設計されています。

もし試すなら、まずは1〜3ヶ月を目安に、毎日の習慣として続けてみるとよいでしょう。

気分の落ち込みが長く続くようなときは、食品で対処しようとせず、早めに医師へご相談ください。

まとめ

ヤマブシタケは、「なぜ良いとされるのか」という仕組みの研究が進み、人を対象にした臨床試験でも報告が積み重なってきている食品素材です。記憶・気分・睡眠といった方向で研究が行われていますが、いずれもまだ小規模な研究が中心です。安全性も高いことが知られています。

ただし、継続的な摂取が前提であることと、病気の治療薬とは異なることは、念頭に置いておく必要があります。ヤマブシタケに関する研究は現在も続いており、今後さらに知見が蓄積されていくことが期待されています。

この記事が参考にした研究
1. Mori K, Inatomi S, Ouchi K, Azumi Y, Tuchida T. Improving effects of the mushroom Yamabushitake (Hericium erinaceus) on mild cognitive impairment: a double-blind placebo-controlled clinical trial. Phytotherapy Research. 2009;23(3):367–372. doi:10.1002/ptr.2634
2. Nagano M, Shimizu K, Kondo R, Hayashi C, Sato D, Kitagawa K, Ohnuki K. Reduction of depression and anxiety by 4 weeks Hericium erinaceus intake. Biomedical Research. 2010;31(4):231–237. doi:10.2220/biomedres.31.231
監修者

京都大学 農学部 食品工学科を卒業後、同大学院 農学研究科で博士号を取得。大塚製薬 佐賀栄養成分研究所 研究員、京都大学 特任助手、九州大学 特任准教授などを経て、近畿大学 産業理工学部 教授を歴任。食品成分の脳神経機能を専門とし、神経新生に関する特許も保有。

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