食物繊維は摂りすぎるとどうなる?太る・おなら・下痢の原因と正しい増やし方

2026.06.09
成分

腸活のつもりで食物繊維を増やしたら、おならが増えた・下痢っぽい・なんだか太った気がする——そんな心配が出てきた人へ。先に結論を書くと、日本人の多くは食物繊維が「足りない」側にいて、量そのものを怖がる必要はほとんどありません。不快な症状の多くは、増やす「スピード」と「中身の偏り」が原因です。この記事では、おなら・下痢・体重と食物繊維の関係、そしてお腹に負担をかけない増やし方を見ていきます。


食物繊維に「摂りすぎ」「過剰摂取」の上限はある?

ビタミンAや鉄などには「耐容上限量」(これを超えると健康への影響が出るおそれのある量)が決められている栄養素もあります。一方で、食物繊維にはこの上限量が設定されていません。通常の食事から摂る範囲では、摂りすぎによる害が起きにくいと考えられているためです。2025年版の食事摂取基準でも、食物繊維に耐容上限量は設けられていません。

むしろ日本人に多いのは「足りない」ほうです。成人の目標量は年齢で多少変わりますが、おおよそ男性21〜22g以上・女性18g以上。これに対して平均摂取量は1日あたり14〜15g前後にとどまり、多くの世代で目標に届いていません。なお「25g以上」という数字を見たことがあるかもしれませんが、これはWHOなどが生活習慣病リスクの低下を期待してあげる理想値で、日本の目標量とは別ものです。

過剰摂取より「足りなさ」のほうが課題になりやすい栄養素です。「20gを超えたから危険」という心配はほぼ不要。気をつけるのは絶対量よりも、増やす「スピード」と「中身の偏り」です。

食物繊維で「おなら」「下痢」が増えるのはなぜ?──不快な症状のしくみ

おならが増える・臭くなるのはなぜ?

食物繊維は小腸では消化・吸収されにくく、大腸まで届いて腸内細菌のエサになります。細菌がこれを発酵するときに、水素・メタン・二酸化炭素などのガスが出て、おならの回数や量が増えることがあります。

ただし、腸内細菌が作るガスの多くはにおいがありません。「おならが臭くなった」と感じるときは、食物繊維そのものより、一緒に食べたものが関係していることが多いです。

  • 硫黄を含む食材: タマネギ・ニンニク・ニラ・卵などの硫黄分が腸内で分解されると、においの強いガスが出やすくなります。
  • 動物性たんぱく質の摂りすぎ: 肉や卵に偏ると、腸内でにおいのもとになる成分が増えやすくなります。
  • 腸内環境の切り替わり: 食物繊維を増やし始めた直後は腸内のバランスが変わっている途中で、一時的にガスが多くなりやすい時期です。

食物繊維を無理なく増やしていくと、腸内のバランスが整うにつれてガスが落ち着いてくることが多いです。増やした直後の一時的な変化であることが多いので、あわてて減らさず、数日〜数週間ようすを見てよいでしょう。

食物繊維で下痢・便秘が悪化することもある?

食物繊維は「水溶性」と「不溶性」の2種類に分けられます。

  • 水溶性: 水に溶けてゼリーのようにとろみがつき、便をやわらかく保ちます(わかめ・めかぶ・オクラ・大麦・果物など)。
  • 不溶性: 水に溶けず、水分を吸ってふくらみ、便のかさを増やします(ごぼう・きのこ・根菜・玄米など)。

トラブルになりやすいのは、 不溶性ばかりを急にたくさん摂り、水分が足りないとき です。腸の中で便が硬く固まり、かえって便秘が悪化したり、お腹が痛くなったりすることがあります。逆に、一度に大量に摂ると腸への刺激が強くなり、下痢につながることもあります。

また、もともとお腹が張りやすい・ガスや下痢を起こしやすい人は、大腸で発酵しやすい一部の糖質(タマネギ・りんご・小麦などに含まれる「FODMAP(フォドマップ)」と呼ばれる成分)を急に増やすと、張りや下痢が強く出ることがあります。こうした人は、水溶性食物繊維(オクラ・わかめ・こんにゃくなど)を中心に、少量からゆっくり慣らすのが無難です。

下痢・便秘・お腹の張りが長く続く、体重が減る、血が混じるなど気になる症状があるときは、食事だけで調整しようとせず、医療機関で相談してください。

「食物繊維で太る」は本当?摂りすぎても太りにくい理由

「野菜を増やしたのに太った気がする」という声がありますが、食物繊維そのものが体重を増やす可能性は低いと考えられます。

食品表示のルールでは、食物繊維のエネルギーは1gあたり0〜2kcalとして計算されます(消化されにくいものは0kcalに近く、発酵されるものでも最大2kcal)。糖質の1g=4kcalと比べて低めです。腸内細菌の発酵で一部はエネルギーになりますが、糖質のようにそのまま使われるわけではありません。

「太った」と感じる主な理由は、たいていこの2つです。

  • 調理やトッピングのカロリー: サラダのドレッシングやマヨネーズ、きんぴらや煮物の油と砂糖、グラノーラやナッツの食べすぎなど。野菜料理自体は低カロリーでも、「ヘルシーだから」と安心して全体量が増え、カロリーオーバーになりがちです。
  • ガスでお腹が張っているだけ: 発酵で出たガスが腸にたまると、下腹がぽっこり張り出します。これを「太った」と感じていることも少なくありません。ガスが抜ければ戻ることが多いので、数日単位で見てみましょう。

むしろ食物繊維には、満腹感が続きやすい、食後の血糖値の上がり方をゆるやかにするといった働きがあるとされ、体重管理の面ではプラスに働くと考えられています。

食物繊維の上手な増やし方|目安と摂り方のコツ

急がず、水溶性と不溶性のバランスで

  • 週単位で少しずつ: まずは「今より1日3〜5g増やす」あたりから、1〜2週間かけて腸を慣らします。一度に目標量を目指すのは避け、1日数回に分けると負担が分散します。
  • 水溶性と不溶性を組み合わせる: 一般に、水溶性:不溶性=1:2くらいが目安とされます。不溶性ばかりだと便が硬くなりやすく、水溶性ばかりだとゆるくなりやすいので、「ネバネバ・ヌルヌル系(オクラ・めかぶ・納豆・長芋)」+「きのこ・根菜」を意識すると、自然とバランスが取りやすくなります。
  • 水分もセットで: 不溶性食物繊維は水分を吸ってふくらむことで排便を助けます。水分が足りないまま繊維だけ増やすと逆効果になりかねないので、水やお茶もこまめに摂りましょう。

生野菜だけでは足りない?効率のよい食材

「野菜をたくさん食べる=食物繊維が摂れる」と思いがちですが、レタスやきゅうりなど水分の多い生野菜は、見た目のかさのわりに食物繊維量は多くありません。生野菜サラダだけで1日の目標量を満たすのは、かなり大変です。

効率よく摂れる食材の目安(食べられる部分100gあたりの食物繊維量/食品成分表をもとにしたおおよその値):

食材 食物繊維量の目安 ひとこと
ごぼう(ゆで) 約6g きんぴら・煮物で1食5g以上も狙える
オクラ(ゆで) 約5g ネバネバ成分は水溶性食物繊維
切り干し大根(乾) 約21g 水で戻して煮物に。不溶性が多め
もち麦(ゆで) 約3g前後 主食を置き換えるだけで差がつく
ブロッコリー(ゆで) 約4g 加熱でかさが減り食べやすい
きのこ類 3〜4g台 低カロリーでボリューム感も
納豆(1パック) 約3g 水溶性・不溶性の両方を含む

これらを日々の食事に少しずつ足していくと、無理なく目標量に近づきます。

サプリ・健康食品はどう使う?

食事だけで目標量に届きにくいときは、サプリメントで補うのもひとつの方法です。難消化性デキストリン、イヌリン、サイリウム(オオバコ)など、水溶性食物繊維を中心としたものは比較的おだやかとされます。最初は少量(1日1〜3g程度)から、水分と一緒に摂るのがコツです。

ただし、「サプリを飲んでいるから野菜はいらない」とはなりません。野菜にはビタミン・ミネラルなど、食物繊維以外の成分も含まれています。

1日のモデル献立(目標量に近づける一例)

タイミング 食物繊維の目安
もち麦入りご飯+納豆+わかめ・オクラの味噌汁 約6〜7g
玄米ご飯+魚または肉+ごぼうのきんぴら+ブロッコリー 約7〜8g
根菜・きのこ・こんにゃく中心の鍋または炒め物+海藻サラダ 約7〜8g
間食 りんご半分、またはヨーグルト+少量のサプリ 約1〜2g

「もう一品、食物繊維食材を足す」と意識するだけで、1日のトータルはかなり変わります。

おなら・下痢・体重増加の心配の多くは、「急に増やしすぎた」か「中身が偏った」ことが原因で、食物繊維そのものの害ではありません。

まとめ:「摂りすぎ」より「増やし方」

食物繊維は、摂りすぎよりも不足のほうが問題になりやすい栄養素です。おなら・下痢・体重増加の心配の多くは、「急に増やしすぎた」か「中身が偏った」ことが原因で、食物繊維そのものの害ではありません。

押さえておきたいのは、この5つです。

  • 急に増やさず、1〜2週間かけてゆっくり慣らす
  • 生野菜だけでなく、根菜・きのこ・海藻・豆類・雑穀を組み合わせる
  • 水溶性と不溶性のバランスを意識し、水分もしっかり摂る
  • おならのにおいが気になるなら、一緒に食べたもの(硫黄を含む食材・動物性たんぱく質)を見直す
  • 体重が気になるなら、ドレッシングや調理油の量を見直す

自分のお腹の変化を見ながら、無理のないペースで進めていきましょう。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024)── 食物繊維の目標量、耐容上限量について
消費者庁「食品表示基準について」別添〔栄養成分等の分析方法等〕── 食物繊維のエネルギー換算係数(0〜2kcal/g)
厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」── 各食材の食物繊維量
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「食物繊維の働きと1日の摂取量」── 年齢別の目標量
監修者

京都大学 農学部 食品工学科を卒業後、同大学院 農学研究科で博士号を取得。大塚製薬 佐賀栄養成分研究所 研究員、京都大学 特任助手、九州大学 特任准教授などを経て、近畿大学 産業理工学部 教授を歴任。食品成分の脳神経機能を専門とし、神経新生に関する特許も保有。

関連記事

目次