プレ・プロ・ポスト・シンバイオティクスの違い

2026.07.03
コラム

「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」「ポストバイオティクス」という4つの用語、スーパーやドラッグストアでよく見かけるけれど「結局どう違うの?」と感じている方は少なくないはずです。大切なのは、4つは対立する概念ではなく、腸内で起きている出来事を「スタート・中継・ゴール」として分担する一連のリレーだという視点です。本コラムでは、プロバイオティクス・プレバイオティクスを専門とする国際学術団体(ISAPP)の定義をもとに、それぞれの役割・具体例・相互関係をわかりやすく整理します。


4つをひとことで ── 定義の早見

まずは4つの用語の意味を、シンプルにまとめておきましょう。

用語 ひとこと定義 国際的な定義のポイント(ISAPP)
プロバイオティクス 生きた善玉菌そのもの 適正量を摂取したときに宿主に健康利益をもたらす生きた微生物
プレバイオティクス 善玉菌のエサ 腸内微生物に選択的に利用され健康利益をもたらす基質
シンバイオティクス プロ+プレの組み合わせ 生きた微生物と、選択的に利用される基質の組み合わせ
ポストバイオティクス 菌が作るもの・菌体成分 不活化された微生物および/またはその構成成分で健康利益をもたらす調製物

これら4つは互いに独立した概念ではなく、腸内環境を改善する「流れ」の中でつながっています。以下で各項目を詳しく見ていきます。

プロバイオティクス ── 生きた菌を届ける

プロバイオティクスは、腸内フローラのバランスを改善する目的で摂取する生きた微生物です。「適正量を摂取したとき宿主に健康利益をもたらす生きた微生物」という定義が、国連食糧農業機関・世界保健機関(FAO/WHO)とISAPPによって国際的に確立されています。

特徴としては、外部から新たな「働き手」を腸内に派遣するイメージです。常在菌ではないため摂取を止めると徐々に減少するため、継続的な摂取が重要です。

【代表的な菌株】

  • 乳酸菌(Lactobacillus属・Lacticaseibacillus属:L. acidophilus、L. gasseri など)
  • ビフィズス菌(Bifidobacterium属:B. longum、B. breve、B. bifidum など)
  • 酪酸菌(Clostridium butyricum)、酵母(Saccharomyces boulardii)

【期待されるはたらき】

  • 整腸作用(便性・便通の改善)
  • 免疫調節、アレルギー症状の一部緩和
  • 下痢・便秘の軽減

ポイントは「乳酸菌なら何でもいい」わけではないこと。効果は菌株(ストレーン)レベルで異なり、「便通改善に特化した株」「免疫バランスを整える株」「アレルギー抑制に強い株」など、目的に応じた選択が求められます。

プレバイオティクス ── 菌のエサを届ける

プレバイオティクスは、腸内にすでに棲む善玉菌を選択的に増やし・活性化させる基質(エサ)です。ISAPPによる国際的な定義のポイントは「腸内微生物によって選択的に利用され、健康利益をもたらす基質」。重要なのは、すべての食物繊維がプレバイオティクスではないこと。ビフィズス菌や乳酸菌が優先的に利用し、科学的にエビデンスが確認されている成分のみが該当します。

【特徴】 「菌を摂る」より「菌を育てる」アプローチ。自分の腸内にもともといる常在菌(マイフローラ)を活性化させるため、効果の持続性が高いとも言われます。

【代表的な成分】

  • フラクトオリゴ糖
  • ガラクトオリゴ糖
  • イヌリン
  • ラクチュロース
  • 難消化性デキストリン、一部のレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)

【期待されるはたらき】

  • 善玉菌の増殖促進と腸内フローラの多様化
  • 短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸)の産生増加
  • 腸内pHの低下による病原菌抑制
  • ミネラル吸収サポート・食後血糖値上昇の緩和

近年の研究では、一部のポリフェノール類(カカオポリフェノール、アントシアニンなど)も大腸で有用菌に利用されることで、プレバイオティクス様の作用を示す可能性が示唆されています。

シンバイオティクス ── プロ+プレを同時に届ける

シンバイオティクスは、プロバイオティクス(生きた菌)とプレバイオティクス(エサ)を組み合わせたものです。ISAPPの最新の国際的整理では、さらに2種類に分類されています。

【2つのタイプ】

  • 菌とエサがそれぞれ独立して効果を発揮する組み合わせ。例:ヨーグルト+オリゴ糖
  • プレバイオティクスが、共存する特定のプロバイオティクス株を選択的にサポートするよう設計されたもの。例:特定ビフィズス菌株+その株専用のオリゴ糖

【特徴】 単に混ぜればよいわけではなく、「この菌にはこのエサがベスト」というマッチングが重要。エサがあることで摂取した菌の生存率・定着率・代謝活性が高まることが期待できます。

食品では「発酵食品+食物繊維・オリゴ糖源」の組み合わせがシンバイオティクスに相当します。納豆+刻み玉ねぎ、ヨーグルト+バナナ+オートミール、味噌汁+ごぼうといった、昔ながらの和食の献立は、実はシンバイオティクス的食卓の好例と言えます。

ポストバイオティクス ── 菌が作り出すもの・菌体そのもの

ポストバイオティクスは、ISAPPが近年新たに定義した比較的新しい概念です。「生きた菌を含まない、不活化された微生物および/またはその構成成分の調製物で、健康利益をもたらすもの」と定義されます。

【2つのカテゴリー】

  • 菌が発酵過程で産生した物質:短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸)、有機酸、ペプチド、ビタミン類、菌体外多糖など
  • 加熱・乾燥などで意図的に不活化された菌体そのもの:細胞壁成分(ペプチドグリカンなど)、核酸、菌体外多糖を含む

【なぜ注目?】 生きた菌(プロバイオティクス)には「胃酸で死滅しやすい」「免疫機能が低下した方への生菌リスク」「保存性の課題」がありました。ポストバイオティクスはこれらをクリアし、加熱殺菌や長期保存に強く、加工食品への応用もしやすい利点があります。

伝統的な発酵食品(味噌・醤油・黒酢・チーズなど)には、発酵過程で生成された多様な代謝産物や死菌体が含まれており、ポストバイオティクスの豊かな供給源です。また化粧品や医薬品への応用も急速に広がっています。

4つの関係を整理 ── 腸内「菌のリレー」

4つの関係は「エサ → 菌 → 代謝産物」という流れとして理解すると、それぞれの位置づけが明確になります。

①プレバイオティクス(エサ) 食物繊維・オリゴ糖が消化されずに大腸へ届く

②プロバイオティクス(菌) 乳酸菌・ビフィズス菌などがエサを発酵・代謝する

③ポストバイオティクス(産物) 短鎖脂肪酸・菌体成分などが腸管・全身に作用する

↑ シンバイオティクス(①+②を同時に届ける)

「プレ(エサ)を摂って、プロ(菌)を活性化させ、ポスト(代謝産物)を得る」という黄金ルートをスムーズに回すこと──これが腸活の本質と言えます。

つまり、私たちが最終的に腸から享受したいのは「菌そのもの」よりも、菌が産生するポストバイオティクス(短鎖脂肪酸による腸管バリア強化・免疫調節など)である場合が多いのです。なお、腸内ではプロバイオティクスとして摂取した菌だけでなく、もともと棲んでいる常在菌もこのリレーに参加しています。食事全体の質を高めることが、最も持続的かつ効果的なアプローチです。

食品・サプリメントの主な供給源

種類 食品例 サプリメント例
プロバイオティクス ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、ぬか漬け、キムチ 乳酸菌・ビフィズス菌サプリ(腸溶性カプセル等)
プレバイオティクス ごぼう、玉ねぎ、にんにく、バナナ、大麦、オートミール、冷やしご飯 イヌリン粉末、難消化性デキストリン飲料、FOS・GOSサプリ
シンバイオティクス ヨーグルト+バナナ、納豆+刻み玉ねぎ、味噌汁+ごぼう 乳酸菌+イヌリン配合カプセル、プレ・プロ複合サプリ
ポストバイオティクス 味噌、醤油、黒酢、チーズ、漬物(加熱調理品含む) 加熱殺菌乳酸菌製剤、乳酸菌生産物質サプリ

まとめ ── プレ・プロ・ポスト・シンバイオティクスを自分に活かす

腸活に正解はひとつではありません。目的や体質・ライフスタイルに合わせて4つを柔軟に使い分けることが、最新の科学が教えてくれる最も現実的な戦略です。

【まずはここから】 「発酵食品(プロ・ポスト)+野菜・豆類・全粒穀物(プレ)」を毎日の食事に。自然とシンバイオティクス的な食卓が整います。特別なサプリを足す前に、食事のバリエーションを広げることが第一歩です。

【目的別の選び方】

  • 整腸・便通改善を優先したい → プロバイオティクスを軸に、プレバイオティクスを組み合わせるシンバイオティクス的発想が効率的。
  • 腸内フローラを根本から育てたい → プレバイオティクスが長期的な常在菌の底上げに有効。
  • 生きた菌が合わない・お腹が弱い → ポストバイオティクス(加熱殺菌乳酸菌・乳酸菌生産物質)が穏やかな選択肢。
  • 忙しくて食事が偏りがち → イヌリン粉末や難消化性デキストリン配合飲料など、プレバイオティクスのサプリで安定補給。

4つは競合するものではなく、補完し合う関係です。一朝一夕で腸内環境は劇的に変わりませんが、日々の積み重ねが確実に土壌を変えていきます。まずは今日の一食に、発酵食品と水溶性食物繊維を「セット」で加えることから、あなたの腸内リレーを動かしてみてはいかがでしょうか。

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監修者

京都大学 農学部 食品工学科を卒業後、同大学院 農学研究科で博士号を取得。大塚製薬 佐賀栄養成分研究所 研究員、京都大学 特任助手、九州大学 特任准教授などを経て、近畿大学 産業理工学部 教授を歴任。食品成分の脳神経機能を専門とし、神経新生に関する特許も保有。

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